皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
くすぐったいのは、肌じゃない。

心だった。

私の想いを知ってくれている。

大切にしようとしてくれている。

――この人を、愛してしまったのだ。

「では……ローストビーフが好きです。」

そう呟くと、アレシオ殿下は目を細めて笑った。

「了解。最高のものを用意させよう。」

そんな何気ない会話すら、私には宝物に思えた。

この夜が、どうか穏やかで、幸せな時間でありますように──そう願いながら、私はそっと彼の腕に体を預けた。

ディナーのローストビーフは、絶品だった。

トロトロに煮込まれたお肉が、口の中でとろける。

「うん!美味しい!」

そんな私を見て侍女達は微笑む。

「楽しそうで何よりです。」

すると年配の侍女長が笑った。

「こんなにも、皇太子殿下がお喜びなるお姿は、久しぶりです。」

「おい、モエナ。」

仲がいいのか、侍女長とアレシオ殿下は会話を弾ませていた。
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