皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
低く穏やかな声で問いかけられ、私は微笑んで頷いた。

「はい。特段、用事は入っておりません。」

「よかった。午前中は少し公務が立て込んでいてね。だが、午後には時間が取れる。……庭園を一緒に散歩しないか?」

優しい誘いに、私の胸がときめく。

「はい、ぜひ。」

自然と笑顔がこぼれると、アレシオ殿下も柔らかく微笑んだ。

「それまで……ここで時間を潰しているといい。」

その“ここ”というのは、昨夜を共に過ごしたアレシオ殿下の私室。

彼がこの場所に私を残していく。

それが、なんだかとても特別な意味を持つように感じて、私はそっと頷いた。

「……はい。お言葉に甘えて。」

こうして私の、何気ないはずの朝が、心をふるわせるほど甘やかに始まったのだった。

午後までの何気ない時間を、ここで過ごせるのがとても嬉しかった。

しばらくしただろうか。廊下が騒がしくなった。

「マリアンヌ皇女。ここからは皇太子殿下の私室でございます!」
< 147 / 234 >

この作品をシェア

pagetop