皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「忠告してあげる。皇太子殿下の心は、そんなに簡単に手に入るものじゃないわよ。」

それだけ言うと、彼女はくるりと踵を返し、部屋を出ていった。

残された私は、胸に押し込めたはずの不安を、少しだけ感じていた──。

午後になり、アレシオ殿下の待つ庭園へと足を運んだ。

けれど、そこにいたのは殿下ひとりではなかった。

白薔薇のアーチの下、マリアンヌ皇女が殿下と向かい合っている。

華やかな笑みの奥に、どこか剣のような鋭さを感じた。

「この公募は、茶番劇だったのかしら?」

マリアンヌ皇女が、笑みを浮かべたまま問いかける。

その声音には、静かな挑発が混じっていた。

だがアレシオ殿下は動じない。いつも通りの冷静な声で答える。

「いいえ。これは皆が認める皇太子妃を選任するための、公平な審査だ」

その言葉に、マリアンヌ皇女の視線がふとこちらを捉える。

「あら、公平ということは──私が皇太子妃に選ばれる可能性も、あるということかしら?」
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