皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「エルセリナ公爵家か。名門だな。」

……アレシオ殿下だった。

驚いて言葉を失う私をよそに、殿下は自然な動作で用紙を受け取り、目を通していた。

「ありがとうございます。」

リディアが小さく頭を下げた。

その頬は、わずかに赤らんでいる。

殿下は書類から目を上げ、やや柔らかく言葉を紡いだ。

「君は──歴史の成績が良いんだな。好きなのか? 歴史が。」

「はい。特に王国設立期が一番好きでした。」

「建国王の信条を、暗唱できるか?」

「“力は正義ではない。正義が、力とならねばならぬ”──ですよね。」

アレシオ殿下の目が細められる。

わずかに、笑った。

まるで、彼女を“よし”と認めたような微笑。

リディアは緊張しながらも、嬉しそうに笑っていた。

そんな二人の様子を、私はただ、黙って見ていた。

胸の奥が、じん、と焼けるように熱かった。

──私には、そんな微笑みは向けてくれなかったのに。
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