皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「……いっそ、公募になどしなければよかった。最初から、君にだけ目を向けていれば……!」

彼の声が震えていた。

その体温が、切なさと後悔をそのまま伝えてくる。

「……そのお言葉だけで、充分です。」

背を向けたまま、微笑む。

でもその微笑みは、涙に濡れていた。

「ありがとう、アレシオ様。」

アレシオ殿下の悔やむ声が耳に残る。

その瞬間、私の心の奥底がじわりと熱を持った。


「……君だけを見ていればよかった。いっそ、公募になどしなければ……」


――そう。私の目的は、最初からこれだった。

「はは……」

笑いが漏れた。

私は誰にも気づかれないよう、そっと唇を吊り上げた。

そうよ。
私を切り捨てた男に、ここまで言わせた。

悔やませた。後悔させた。
これは、私の勝利――見事な“ざまあ”よ。

これで終わり。
これで、全部終わったの。

私は静かに背を向け、廊下を歩き出す。
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