皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
家に帰った私を見て、お父様は目を見開いた。

「……今夜は、帰って来ないと思っていたぞ。」

その声に、私の中の何かが緩んだ。

どこかで、誰かにそう言ってほしかったのかもしれない。

私は静かに言った。

「……お別れしてきました。」

「なに⁉」

驚きと怒りを含んだお父様の声が、玄関に響く。

私は前を向いたまま、視線を合わせずに続ける。

「王妃には……マリアンヌ皇女が適任です。」

「おい、セラフィーヌ!」

私が通り過ぎようとしたその時、お父様の厳しい声が背中を打った。

「諦めるのか、皇太子殿下のことを。」

私は立ち止まり、肩越しに呟く。

「……諦めるしかないんです。」

「愛し合っているんじゃなかったのか!」

鋭い言葉が心に突き刺さる。

私は目を閉じ、息を吸った。

「それだけじゃ……王妃にはなれません。」

想いだけでは越えられない壁がある。

わかっているからこそ、私は背を向ける。
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