皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
その一言が、鋭く胸を突き刺した。

リディアが、横でバツの悪そうに眉をひそめている。

それでも殿下は構わず、彼女だけを見つめていた。

「殿下。私は決めました。あなたの妃になると。」

エミリアの言葉は、迷いがなかった。

揺るがない自信に満ちていた。

「ああ。」

その声は、まるで“答え”のようだった。

次の瞬間。
二人は、抱きしめ合っていた。

空気が変わった。
まるでこの場にいるすべての者が、彼らの世界から排除されたかのように。

その光景は、あまりにも静かで、だからこそ、残酷だった。

──ああ、私は“選ばれなかった”。

ずっと信じてきた未来を奪われ、ようやく立ち上がろうとしたその足元で、あの人は、違う誰かに“恋”を差し出していた。

胸が痛い。
ひどく、惨めだった。

「行きましょう、リディア」

そう言って私はくるりと背を向けた。

これ以上ここにいたら、気持ちが壊れてしまう。

笑顔の仮面も、持ちこたえられそうになかった。
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