皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「……済まぬな、セラフィーヌ嬢。」

鼓動が、止まった。

「愛だけでは、国は支えられぬ。」

言葉は、鋭く胸に突き刺さった。

国王はそのまま私から手を離し、ゆっくりとマリアンヌ皇女の前に立つ。

「妃には、マリアンヌ皇女が適任だ。」

そう言って、王とマリアンヌ皇女は固く握手を交わした。

その瞬間、会場がどよめく。貴族たちの拍手が鳴り響くなか、私は何も聞こえなかった。

ただ、耳の奥で風が吹きすさぶような空白の音が響いていた。

──愛だけでは、国は支えられない。

そんなこと、わかっていたはずなのに。

けれど、やっぱり──涙が、滲んでいた。

国王が、玉座の前で静かに振り返る。

「アレシオ、マリアンヌ皇女の前に。」

厳かな声が広間に響き渡り、空気が凍りつくような沈黙が訪れた。

アレシオ殿下はゆっくりと階段を降り、王の前へと進む。

その表情は無表情で、何を考えているのか誰にもわからない。

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