皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
月光が照らすその場所には、確かにアシュトン殿下の姿。

そして彼の腕の中にいたのは──

「……ケイシー?」

驚きで胸が高鳴った。

「こんなところ……誰かに見られたら……」

ケイシーの声は、怯えるようにかすかに震えていた。

だがその細い肩を、アシュトン殿下は強く抱きしめる。

「我慢できないんだよ、ケイシー。」

彼は彼女の髪に顔を埋め、まるで何かを飲み込むようにキスを落とす。

ケイシーは抗うこともできず、されるがままに目を閉じていた。

「君が、他の誰かのものになるかもしれないなんて……そんなの、耐えられない。」

「……でも、私は伯爵令嬢……殿下は……」

「関係ない。俺は、君を手放したくないんだ。」

切迫した愛の吐息。二人だけの世界。

それは身分など越えた、純粋で、誰にも引き裂けない愛の形だった。

──いけない。

そっと離れようとした時だ。

「誰?」

アシュトン殿下に見つかってしまった。
< 210 / 234 >

この作品をシェア

pagetop