皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
その言葉に、私は思わず息を呑んだ。

「本来なら、俺が彼女に会うことさえも許されないのに……会いたくて、こうして夜を選ぶしかなかった。」

「殿下……」

ケイシーがその言葉に目を潤ませた。

彼女の表情には、抑えきれない想いと、それでも引き下がろうとする覚悟が見て取れた。

「わたくしは、殿下の立場を危うくするような存在でしかありません。だから、これ以上は……」

「やめてくれ、ケイシー。」

アシュトン殿下が彼女の手を強く握りしめる。

「君を失うくらいなら、俺は……皇子でなくなってもいい。」

「そんなこと言わないでください……!」

ケイシーの声が震えた。

私は、胸が締めつけられる思いだった。なんて不器用で、でもなんて真っ直ぐな愛情なんだろう。

そっと近づいて、私は二人の間に立った。

「大丈夫です。あなたたちの恋は、誰にも咎められるものではありません。」
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