皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
その柔らかな声音に、マリアンヌ皇女が小さく笑う声が続いた。

「ありがとう。でも……私は、あなたに選ばれる立場ではないもの。」

「そんなことはない。」

アレシオ殿下の声が、一瞬だけ鋭くなった。

「君は優秀だ。だが君を持ち上げれば、その評価が“血縁ゆえ”だと噂されるだろう。君自身に批判が集中する可能性がある。それだけは避けたかったんだ。……すまない。」

しばしの沈黙。

やがてマリアンヌ皇女が、少しだけ寂しそうに囁いた。

「あなたが私を気遣ってくれているのは、分かってる。でも、私は一人の女性として……」

言葉がそこで濁った。

それ以上は、聞こえなかった。

ただ、どこか遠くを見つめるような殿下の声が最後に重なる。

「マリアンヌ。君の才能は、必ず報われる日が来る。」

私は、見てしまった。

柱の影、ほんの少しずれた視線の先。

アレシオ殿下が、マリアンヌ皇女をそっと抱き寄せていた。

皇族同士。血の繋がった者同士。

< 45 / 234 >

この作品をシェア

pagetop