皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
それは、ただの優しさなのに──胸がぎゅっと締め付けられるほど、嬉しかった。

マントからはアレシオ殿下の香りがした。凛として、どこか懐かしい香り。

「……困ったな。」

「えっ?」

小さく漏れた声に、私は思わず彼を見つめた。

「君を、このままマントに包んで、俺の部屋に連れ去りたくなってしまう。」

「──!」

心臓が跳ねた。胸の奥で、何かがふわりとほどけていく。

アレシオ殿下は静かに笑った。

「セレフィーヌ……君って、不思議だよ。最初は、ただ気になるだけだった。でも……」

その唇が、私の額に、頬に──いや、もしかして唇に──近づいてきたその時。

「セレフィーヌ様、お迎えに上がりました!」

あまりにも絶妙なタイミングで、声が割り込んだ。

「っ……」

アレシオ殿下が一歩だけ身を引く。

私はマントの中で、赤くなった顔を隠すことしかできなかった。

「では、また。」
< 49 / 234 >

この作品をシェア

pagetop