皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
でも、今回の相手は──アレシオ殿下。

一国の皇太子であり、完璧さを求められる存在。少しでもタイミングを外せば、他の令嬢たちとの比較材料になるだろう。

「きっと、試されるのよね。技術だけじゃなくて、所作や、礼儀、空気を読む力まで……」

「うう、今からお腹が痛くなってきた。」

そう言って、リディアはソファに倒れ込んだ。私は彼女の背を軽く叩きながら、空を見上げた。

──アレシオ殿下と踊る。

心臓の鼓動が、静かに速くなる。

本当に試されるのは、きっと舞踏そのものじゃない。

その一歩一歩の中に、どれだけ自分を見せられるか。

どれだけ、彼に届くか──

そして数日後の午後――

曇り空の下、思いがけない客が私の屋敷を訪れた。

「エミリア……?」

玄関に立っていたのは、いつも凛として隙のないはずのエミリア・ロザリンド伯爵令嬢だった。

だがその瞳には、見慣れない翳りが差していた。
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