皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
彼女は流れるように応じ、その足取りには一分の乱れもない。

まるで、おとぎ話の中の王子と姫。

息がぴったりだ。

手の添え方、目線、間合い、そして……見つめ合う瞳の奥。

まるで、誰も見ていないかのように。

(二人の間に、何か……本当に、あるの?)

思わず手のひらに力が入る。

彼女はずっとアレシオ殿下を慕っていた。

それは確かな事実。

けれど、殿下もまた──彼女に何か、想いを寄せているように見えてしまう。

そんなふうに見えたのは、私の……嫉妬?

音楽が終わり、ふたりが深く礼を交わす。

エミリアの頬はうっすらと紅潮し、殿下は穏やかな笑みのままだった。

会話の内容は聞こえないけれど、彼女は小さくうなずいていた。

(これは……勝てないかもしれない)

心の中で、言葉にならない感情が静かに波を立てた。

次に指名されたのは、マリアンヌ皇女だった。

「私と踊って頂けますね。」

それは、試験の中で唯一──自分から手を差し出した誘いだった。
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