皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
けれど、それを咎める者はいない。彼女もまた、王族なのだから。

「もちろん。」

アレシオ殿下の口元が自然にほころぶ。

まるで何度も踊り慣れた相手と、また一曲、思い出の続きを奏でるように。

深々と礼を交わした二人は、音楽の始まりを待つまでもなく、目と目で合図を交わし──

ステップを踏み出した。

(……違う。)

最初の一歩で、そう思った。

エミリアとのダンスがまるで舞台の上のようだったのに対し、マリアンヌ皇女との踊りは、まるで“日常”の延長のように自然だった。

そして……親密だった。

まるで世界にふたりきり。

他の誰も見えていないかのように、軽やかで、伸びやかで。

その中で、ふいに二人が踏んだ見慣れないステップに、私は目を見張った。

──なに?今の……。

他の貴族令嬢たちも、ざわつきを見せた。

あれは、正式な舞踏会では使われない振りだった。

けれど二人は呼吸を合わせて、当然のようにその動きを続ける。
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