皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
それはもしかしたら──
王族同士だけが知る、古式の舞踏かもしれない。

私の中に、波紋のように広がる不安。

(もし私が皇太子妃に選ばれても…… 果たして、あのステップを踏む資格があるの?)

強く、手を握りしめた。

あの踊りは“伝統”か、それとも“愛情の証”か。

どちらにしても、私には踏み入れられない世界のような気がした。

音楽が終わると、マリアンヌ皇女は軽やかに裾を翻し、優雅に一礼した。

アレシオ殿下も深く礼を返し──どこか満ち足りた顔をしていた。

心の中で、小さな棘が刺さった気がした。

そして次に、リディアともう一人の令嬢が順にアレシオ殿下と踊り終えたとき──

私達はようやく試験という緊張から解放された気分になった。

どの令嬢も無難にこなし、なかでもリディアは明るく、彼女らしい華やかさで場を和ませていた。

そのおかげか、舞踏会全体がふっと柔らかな空気に包まれていく。
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