皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
楽団が次の曲を奏でる頃には、参加していた王族や貴族の若者たちが、試験とは関係のない“本来の舞踏会”を楽しみ始めていた。

その時──

「失礼、踊って頂けますか?」

背後からの丁寧な声に振り向くと、見知らぬ男性が微笑んでいた。

「私、ダグラスと言います。マリアンヌの兄にあたります。」

少し年上に見える彼の姿は、気品の中に優しさを滲ませていた。

「……ということは、アレシオ殿下の従兄弟でいらっしゃるのですね。」

「そうなります。」

にこやかに頷いたダグラス殿下は、私に手を差し出した。

それは、王族としての誘い方ではなく──
一人の紳士として、舞踏会を楽しむ礼儀だった。

私はそっと手を預けた。

やがて楽団の柔らかな旋律が空気を満たし、私たちは流れに乗るように、静かにステップを踏み出した。

緊張が解けたせいか、足取りは自然で、気持ちも軽かった。
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