皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
その言葉に、私はぐっと息を詰めた。

「しかし、“皇太子妃”という肩書きの候補となると……どうしても、血筋や序列に引きずられてしまうのが、現実です。私はそれを変えたかった。“誰が選ばれても、納得できる妃”を、心で選びたかったのです」

正論だった。
あまりにも、美しい正論。

だからこそ、痛かった。

私は、数十人のうちの“一人”でしかない。

努力では、愛されることはできない──そう言われた気がした。

「それは……公平な判断のつもり、ですか。」

気づけば、私の口から言葉が漏れていた。

殿下は、少しだけ表情を緩めた。

「ええ。少なくとも私は、そう信じています。」

その瞬間、心のどこかで何かが崩れた音がした。

優しい笑みは、私の痛みに気づかないまま、静かに浮かんでいた。

そして──
アレシオ殿下のまっすぐな視線が、私を捉えた。

「セレフィーヌ嬢」

一言、名を呼ばれただけで、胸が高鳴るのがわかった。
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