皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
舞踏会が終わり、煌びやかな音楽も、笑顔も、やがて余韻のように消えていった。

残ったのは──静かなざわめき。

参加者の多くは、すでに次の話題に夢中だった。

誰が最終候補に選ばれるのか。その話題で持ち切りだった。

「セラフィーヌ嬢は、なかなかよかったな。」

そんな声が、ふと耳に届く。

悪い評価ではない。むしろ褒め言葉かもしれない。

でも──。

「でも、一番素晴らしかったのはエミリアだわ。」

その一言が、全てをかき消した。

「雰囲気の作り方がまるで違った。試験ということを忘れてしまいそうだったわ。」

「ええ。アレシオ殿下だけじゃなくて、私達まで見惚れていたもの。」

「エミリア嬢の立ち居振る舞いには、まるで芸術のような気品があるわよね。」

うんうんと頷き合う声の輪。

まるで、そこに“正解”があるようだった。

──私は。

どんなに頑張っても。
どんなに勉強しても。
どんなに礼儀を身につけても。
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