皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
その時だった。
私は何気なく、王宮の大玄関を見た。

アレシオ殿下が、誰かを見送っていた。

その相手は──エミリア嬢だった。

彼女はドレスの裾を優雅に持ち上げ、殿下の言葉に微笑みを浮かべていた。

「エミリア。今日のダンス……見事だった。」

その口調は穏やかで、どこか親しげで。

そして何よりも、優しさに満ちていた。

それだけでも十分だった。

──なのに。

あれだけ舞踏会の中で見つめ合っていた二人なのに、まだ、見つめ合うの?

そんな疑問が、胸にチクリと刺さった。

ふと、自分の気持ちが分からなくなった。

どうして……私、こんなにもエミリアに嫉妬しているの?

エミリアは、エミリアでしかない。

王国一と評される才色兼備の令嬢で、そしてアレシオ殿下とは幼馴染み。

殿下が親しげに話しかけたとしても、なんの不思議もない。

誰もが納得する関係。
むしろ、自然な姿だ。
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