皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「今の段階では、愛を言葉にすることはできません。」

私がそう口にした瞬間、アレシオ殿下の手がそっと離れていった。優しく、けれど確実に。

「まだ早かったかな。」

その穏やかな声に、私は顔を向けることができなかった。

目を合わせる勇気が出ない。胸が締めつけられるように痛む。

「それとも、俺は君が愛情を注ぐ対象ではないのかな。」

その言葉には、静かに心をかき乱す力があった。

まるで、私の気持ちそのものを疑われているようで──いや、きっとそうだ。

私は家柄で選ばれたに過ぎない。

そう思われているのかもしれない。

皇太子妃に選ばれたいという誇りだけでここに立っている、そんなふうに見られているのだろうか。

それとも、アレシオ殿下は試しているの?

私の心に恋が芽生えていることを、どこかで感じ取って、あえて問いかけているの?

「自分に恋をしてほしい」と願って、私に気づかせようとしているのだろうか。
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