近くて、遠い、恋心
「事故の一報を受けた真理子さんは、どうしていいかわからなかったんだね。僕に電話して来て、『助けて、夏菜が死んじゃう』とずっと叫んでいたよ。夏菜さんが運ばれた病院で合流した後も、ずっと顔面蒼白で震えていた。嫌がらせにあっても、理不尽な扱いを受けても気丈に振る舞っていた真理子さんが、夏菜さんの事故に身も世もなく泣いて僕に縋っている。チャンスだと思った」
「えっ?」
意外すぎる義父の言葉に反射的に顔をあげれば、いつもと同じ穏やかな笑みが見える。でも、どこか違和感を感じるのは義父の瞳の奥に見え隠れする執着の炎を見つけてしまったからだろうか。
「意外かい? でもね、僕だって男だ。好いた女を手に入れるチャンスが転がっていれば飛びつく。だから、真理子さんの弱味につけ込んだ」
「母の弱味……」
「あぁ、夏菜さんを守るには真理子さん一人じゃ限界がある。僕と結婚して二人で夏菜さんを守って行こうって、弱っている真理子さんを唆した。彼女を手に入れるためにね」
義父の言葉に衝撃が走る。
母が義父と結婚した理由が私だったなんて、そんなことあり得るの?
義父の言葉が俄かには信じがたい。
「母は……、母はお父さんを愛していたから結婚したんじゃないんですか?」
「どうだろうね、真理子さんの心は僕にはわからない。ただ一つ言えるのは、真理子さんの心にいるのは夏菜ちゃん、ただ一人ということだよ。それは昔も今も変わらない。彼女にとって夏菜ちゃんが全てで、君を守るためなら銀座ナンバーワンの地位も簡単に捨てるし、結婚っていう柵さえも受け入れる。ほらっ、真理子さんは一本筋の通った真に強い人だろ」
「えっ?」
意外すぎる義父の言葉に反射的に顔をあげれば、いつもと同じ穏やかな笑みが見える。でも、どこか違和感を感じるのは義父の瞳の奥に見え隠れする執着の炎を見つけてしまったからだろうか。
「意外かい? でもね、僕だって男だ。好いた女を手に入れるチャンスが転がっていれば飛びつく。だから、真理子さんの弱味につけ込んだ」
「母の弱味……」
「あぁ、夏菜さんを守るには真理子さん一人じゃ限界がある。僕と結婚して二人で夏菜さんを守って行こうって、弱っている真理子さんを唆した。彼女を手に入れるためにね」
義父の言葉に衝撃が走る。
母が義父と結婚した理由が私だったなんて、そんなことあり得るの?
義父の言葉が俄かには信じがたい。
「母は……、母はお父さんを愛していたから結婚したんじゃないんですか?」
「どうだろうね、真理子さんの心は僕にはわからない。ただ一つ言えるのは、真理子さんの心にいるのは夏菜ちゃん、ただ一人ということだよ。それは昔も今も変わらない。彼女にとって夏菜ちゃんが全てで、君を守るためなら銀座ナンバーワンの地位も簡単に捨てるし、結婚っていう柵さえも受け入れる。ほらっ、真理子さんは一本筋の通った真に強い人だろ」