売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「1000だ。」

声の主は、右手側、二番目の席に座っていた年老いた男。

しわの浮き出た手をゆっくりと掲げ、そのまま動かさずにいる。

「どうした? 1000出してるんだぞ。俺のモノだろう?」

低く、重い声。

その言葉はあまりにも当然の権利であるかのように、会場を支配していた。

叔父がポカンと口を開けたまま、男の顔を見つめる。

私は──凍りついた。

その男は、明らかに歳をとりすぎていた。

女を抱くには、あまりに老いた身体。

けれど、その目だけはぎらついていて、まるで玩具を選ぶ子供のように残酷だった。

──私……あの人に、もてあそばれるの……?

心臓が冷たくなる。

息が苦しい。

誰か、止めて。

恐怖が喉の奥でせり上がり、膝がわなわなと震え始めた。

けれど──誰も助けてくれない。

それがこの場の“常識”なのだ。

そしてこの瞬間──クラディア・アバーンという人間は、“商品”として、落札されようとしていた。
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