売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
その言葉に、胸が温かくなった。

「そう……」

クライブが、私のことで悩みを抱えていたことも、無理をして笑っていたことも、私はちゃんと知っていた。

だから、ようやく役に立てた気がして嬉しかった。

執務室の隅では、クライブが山積みの書類を仕分けながら、ちらりとこちらを見て微笑む。

「クラディア、少し休めよ。午後の会議まで時間あるし。」

執務官は、クライブの方をちらりと見て、ふふと笑った。

「クライブ様は、あれで伯爵を気にされてるんですよ。」

「えっ?」私は驚いて目を見開く。あのしかめ面で? どこをどう気にしてるって言うの?

「例えば……」執務官は、意味ありげに私の耳元に顔を寄せた。

「“ああ、麗しき美貌の持ち主、クラディア伯爵”」

こっそりと囁かれたその言葉に、私は思わず吹き出しそうになった。

すると──

「ゴホンッ!」

クライブの大きな咳払いが、部屋に響いた。
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