売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「何もできないと分かっていても、せめて……傍で手を握ってやることぐらいは、できたはずなんだ……」

クライブの声が揺れる。

「子供が流れる痛みを、たった一人で抱えて……クロエは、俺を呼びもせずに、静かに……あんなにも、静かに逝ったんだ。」

その言葉に、お父様の表情が深く沈んだ。

「……クライブ。」

彼はゆっくりとクライブの肩に手を置いた。

そして、かすかに震えるその身体を、そっと抱き寄せる。

「仕方がなかったんだ。あれは……男にはどうすることもできない苦しみだった。」

「……それでも……」

クライブは嗚咽を押し殺しながら言った。

「何もできなくても……側にいて、一緒に苦しみを味わうことはできたはずだ。クロエが一人で泣いていた夜……」

クライブは嗚咽を遂に漏らした。

「その手を握って、せめて痛みを分かち合えたら、クロエは……少しでも、苦しまずに逝けたかもしれないんだ……」
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