売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
ポロリと、クライブの頬を伝って涙が落ちた。

お父様はその涙を見て、何も言わなかった。

ただ、強く、深く、彼を抱きしめていた。

それはまるで、過去の罪と、今ある命への祈りを包み込むような抱擁だった。

「今度こそ……俺は、愛する人を失いたくない。」

かすれた声が、私の耳に届いた。

目をゆっくりと開けると、クライブの顔がすぐそこにあった。

涙が頬をつたって、私の頬に落ちる。

「クライブ……泣かないで。」

私が名を呼ぶと、彼は顔を歪めた。

「君が……こんなにも苦しんでいるのに、泣かずにいられるか……」

その声が震えていた。

あのいつも強くて、誰にも涙を見せなかったクライブが、泣いていた。

そっと、私の手を強く握るその温もりが、かすかな痛みと共に伝わってくる。

私はまだ……生きている。そう思った。

部屋の隅で見守っていたお父様が、静かに立ち上がる。
< 138 / 158 >

この作品をシェア

pagetop