売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
私はその名を、何度も胸の中で繰り返した。

そして、そっと囁いた。

「クリストファーを、アバーン伯爵にしたいの。」

そう口にした瞬間、胸の奥が熱くなった。

それは一つの決意。私が背負ってきた家の名を、再びこの世に刻むための。

クライブは驚きもせず、ただ優しく私を見つめて微笑んだ。

「もちろんだよ、クラディア。君がアバーン伯爵家の当主であることを、俺は知っている。そして、それを誰よりも誇りに思っている。」

あの日──
私がアバーン伯爵の名を再び許された日。
陛下はこう仰った。

「汝、アバーン伯爵家に連なる者なれば、男子を産みし暁には、再興を許す。」

それは“赦し”であると同時に、“命を紡ぐ責任”でもあった。

「だからこそ、私は生きなきゃいけなかったのね……」

私はそっとクリストファーを抱きしめた。

小さな手、小さな体。でもその中には、百年の血脈が流れている。

「この子の中には、アバーン家の誇りと、あなたとの愛があるわ。」
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