売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
私の首元にぴたりと沿うそれは、宝石に詳しくない私でさえわかるほどに高価なものだった。

嫌な予感はしていた。

けれど、まさかこの日が、人生の“終わり”になるとは思わなかった。

──断れない。

育ててもらった恩、衣食住を与えられてきた負い目、

そして何より、「令嬢らしく」と仕込まれ続けてきた、逆らえない習性。

私は、ネックレスの留め具を自分の手で閉じた。

それが、私の自由に対する“最後の鍵”だったとも知らずに。

ダイニングには、見たこともないほど豪華な料理が並んでいた。

ローストされた仔牛肉、焼きたてのパイ、煌びやかな彩りの前菜。

そして、真っ白な生クリームで飾られたバースデーケーキ。ケーキの上には、紅い果実と「20」の蝋燭。

「叔父様……。このような、豪華なバースデーパーティーを……ありがとうございます。」
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