売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「……いいだろう。」

クライブの父──カーティス・オーセントの声が、ふいに静まり返る。

そして次の瞬間、目の色が変わったのが、扉越しにでもわかる気がした。

「おまえも、“あの女”が死んでから……他の女を求めなかったんだからな。」

──あの女?

誰のこと……?

“死んだ女”?

クライブが、かつて愛した人……?

理解が追いつかないまま、カーティスの声は淡々と続いた。

「おまえは、このオーセント家の跡取りだ。血筋を残す義務がある。……それが、家に生まれた者の責務だ。」

私はそっと、寝室の柱に身を寄せた。

背中が冷たくなっていく。

そして──その瞬間。

「……あの女を、孕ませろ。」

時間が、止まったように思えた。

私の心臓が、ドクン、と大きな音を立てて跳ねた。

「……はい?」

クライブの声は、あくまでも冷静だった。

驚きも、拒絶も──なかった。

「“あの女”が、オーセントの血を残せば……自由にしてやろう。」
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