売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
静かに、でもはっきりと。

その一言に、私は目の前がぐらりと揺れる感覚に襲われた。

──自由……?

私は、クライブの子供を産めば“自由”になれる?
何それ……そんなの……

「それまでは──あの女は、おまえの“道具”だ。」

ズン、と胸の奥に、重い杭が打ち込まれたようだった。

私が“道具”……
“孕むための器”として見られている?

昨夜、あんなにも優しく抱いてくれたクライブは、そんな目的で私を買ったの?

──いや、違う。
でも……わからない。

私の心は混乱し、息をするのも苦しかった。

助けてくれた人が、今は何を考えているのかまるで見えない。

けれど、どんなに心が揺れても、ひとつだけ確かなことがあった。

──私は、“子を産む道具”なんかじゃない。

そう、胸の中で小さく叫んでいた。

気づけば私は──ドアの片隅で泣いていた。

声を殺し、息を詰めて、膝を抱えていた。

冷たい床が背中に当たり、身体の芯から震えるようだった。
< 37 / 158 >

この作品をシェア

pagetop