売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
──どうして、そんなことを言うの?

私はてっきり、クライブも“父の命令”に従って、私を手に入れたのだと……

あの時の、あの冷たい会話は、私を道具として扱う確認だったのではないの?

「……ふふっ。」

私は、小さく笑ってみせた。
嘲るように。演技のように。

パンを口元に運び、わざとらしく噛むフリをする。

──あてつけだ。

「おいしいですね。さすが、公爵家のごはんです。」

皮肉の混じった声に、クライブは何も言わなかった。

けれど、そのまなざしは、私の芝居の奥にある傷に──ちゃんと気づいているような、優しい色を帯びていた。

だからこそ、私は苦しかった。

私がどんなに突き放そうとしても、この人はきっと、真正面から傷に触れてくる。

私がまだ、彼を“完全に嫌いになれない”と分かっているから。

──そんなずるさが、優しさが。
今は、一番、痛かった。
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