売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
だが私は、“遊び女”。

屋敷にいても、正式な立場ではない。

私に仕える者など、誰一人いない。

その時、扉をノックする音がした。

「失礼します。洗濯物を取りに参りました。」

現れたのは、一人の若い侍女だった。

地味な身なりで、まだ新しく仕立てられたばかりの制服がどこかぎこちない。

「入って。」

私は椅子から立ち上がり、彼女に微笑みかけた。

「よかったら、私も手伝うわ。暇で仕方ないの。」

「……は、はい。」

ぎこちない返事。けれど私は構わず、脱ぎかけのナイトドレスを手に取って畳む。

「ねえ、あなた。クライブの奥様のこと、知っている?」

ふとした好奇心からの問いだった。
でも彼女は──

首を、横に振った。

言葉を添えることもなく、ただ無言で。

その仕草に、私は小さな違和感を覚えた。

(……おかしい)

公爵家の侍女なら、礼儀作法や受け答えは当然教え込まれているはず。
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