売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
それに、“公爵の奥方”のことを知らないなんて──そんなはずがない。

思わず彼女の手元に目をやると、畳み方も不慣れだ。

まるで、侍女のふりをした何者か──そんな疑念すら浮かんだ。

「ねえ……あなた、本当に、この屋敷の人?」

「はい。」

それだけの答えだった。

「えっ……他の人も、あなたと同じなの?」

私の問いに、侍女は一瞬、まばたきしただけだった。

戸惑っているのか、それとも質問に答える権限すら与えられていないのか。

少なくとも、叔父の屋敷の侍女たちは、当たり前に会話くらいできた。

──けれどこの屋敷では、それすら異常。

「……あの、私達は奥様方との会話は控えるようにしつけられています。」

その声は小さく、硬かった。

「旦那様の──お言いつけですので。これにて、失礼します」

きゅっとナイトウェアと丸めたシーツを抱え込むと、彼女はぺこりと頭を下げて出ていってしまった。
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