売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
私はその違和感を抱えたまま、自室へ戻った。

少し遅れてクライブも入ってくる。

私は思わず口にしていた。

「ねえクライブ……この屋敷の使用人は、皆ああなの?」

「……ああ?」

クライブは、ソファに腰を下ろし、ネクタイを緩めた。

「人形みたいに会話をせず、ただ黙々と動くだけの人たち。まるで感情を持っていないみたいだった。」

クライブは少し黙ってから、ぽつりと答えた。

「……たぶん、使用人同士では自由に話しているんだろう。だが、“我々”とは、言葉を交わすなと教えられている。」

「……どうして?」

「それが“主従関係”だからだと。父さんの教えだよ」

クライブの声はどこまでも冷静で、でもどこか諦めたようでもあった。

「主は命じ、従者は従う。そこに余計な感情も、会話もいらない。……それが父の築いた“完璧な支配”だ。」

私はぞっとした。

それはまるで、心と魂を奪われた世界。

そこにあるのは、尊重でも信頼でもなく、ただの“服従”。
< 47 / 158 >

この作品をシェア

pagetop