売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
その温もりに包まれながら、私は静かに目を閉じた。

──どうか、今夜は、私の名前を呼んで。

そう願いながら、眠りに落ちた。

朝。
カーテンの隙間から朝日が差し込む。

ふと目を覚ますと、隣でクライブが目を覚ましていた。

「クラディア……」

その声に振り返ると、彼はどこか不思議そうに私を見つめていた。

「……ずっと、俺の側に?」

私はこくんと頷いた。

「だって、ここしか眠る場所がないのだもの。」

そう言うと、クライブは眉を寄せて、私をそっと抱き寄せた。

胸に顔を埋めながら、小さく呟く。

「……昨夜は君を抱かなかった。」

その声は、いつになく切なげだった。

「毎晩、君を愛していたのに。……すまない。」

私はそっと身を起こして、微笑んだ。

「気にしないで。そういう時もあるわ。」

疲れ果てて、何もできない日もある。
人間だもの。

だけど私は、ただ隣にいたかった。
そう言えないまま、朝の静けさに包まれた。
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