売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
二十歳を過ぎれば、大抵の令嬢はもう婚約者がいて、社交界での“役目”を終えるという。

その次に注目されるのは、新たに社交界にデビューする十六、十七の若い娘たち。

私は……すでに限界だった。

落ちぶれた伯爵家の名にすがり、必死で礼儀作法を学び、着飾って笑って──それでも、まだ誰の目にも留まらない。

だけど、それでも──私は“金持ちの家の子息”に見初められ、結婚しなければならなかった。

それは自分のためではない。

育ててくれた叔父のため。

誰にも知られないように、質屋に通い、食事を切り詰めてでも私を大学に通わせてくれた人。

だから、私は“幸せな結婚”を目指しているのではない。

恩返しのために、誰かの“妻”になろうとしているのだ。

──ああ、もしこの想いが報われる日が来るのなら、私だって、ただ“恋”がしたかった。
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