売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「クラディアも、もう二十歳だ。……ワインを飲むか?」

その言葉に、私はゴクンと喉を鳴らした。

本当は、舞踏会で少しだけ飲んだことがある。

けれど、それを口にするのは少しだけ気が引けて──私は、素直に頷いた。

「はい……」

注がれた紅い液体は、グラスの中で静かに揺れている。

少しだけ鼻をくすぐる香りがして、私はおそるおそる、一口、二口。

「美味しいです……」

思ったよりも飲みやすくて、舌の奥でほのかに甘くて、なんだか、大人になったような気がした。

「いいんだよ、もっと飲んで。」

叔父の声は、いつもより優しげだった。

「はい……」

お祝いの席。
久しぶりに心から笑って、料理を口にして、ワインを飲んで。

それだけで、今日は少しだけ幸福な気持ちになれた。

グラスが空になるたびに、叔父がまた注いでくれる。

ワインはどんどん身体の中に入っていき、ぽかぽかと温かくなっていく。
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