売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「お母様も、きっとこうして刺していたんだろうな……」

心の中でそう呟きながら、私は一針一針、丁寧に縫っていく。

花びらの丸みを縫い出す部分は、慎重に。影になる箇所は、ストレートステッチで繊細に埋める。

輪郭はアウトラインステッチで整えて、柔らかな曲線を描くように。

何度も針を抜き差しして、布の上に小さな薔薇がひとつ、またひとつと咲いていく。

「ふふ、まるで本当に咲いていくみたい……」

そして、角に大きく広がる一輪の薔薇──それが、この模様の仕上げだった。

最後のひと針を終えて、糸を切る。

シーツを手に取り、広げてみると──そこには、見事に咲き誇る薔薇の模様。

「やったぁ! できたぁ!」

思わず歓声を上げ、両手を天に掲げるように伸ばした、その瞬間──

「よかったなぁ。」

背後から、不意に低く優しい声が響いた。

「きゃああっ!? ク、クライブっ!?」
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