売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
驚いて振り向いた私の目に飛び込んできたのは、扉の前で腕を組み、穏やかに微笑む夫の姿だった。

「ずっと見てたの!? いつから……っ」

「ちょうど“やったぁ!”って叫んだところからかな」

クライブはおかしそうに肩を揺らした。

「……ず、ずるいわよ……!」

顔が熱くなるのを隠すように、私は慌ててシーツを胸に抱えた。

でも、彼の瞳はとても優しく、あたたかかった。

「それは……? シーツ?」

クライブの声に、私はハッとして手元の布を慌てて畳んだ。

だが、その動きよりも早く、彼の手が伸びてくる。

「ちょっと……!」

思わず声を上げたけれど、クライブは優しくそれを取り上げ、布を広げる。

「刺繍……?」

彼の指が、角にあしらわれた薔薇の模様をなぞるように撫でる。

「きれいだな……これ、もしかしてベッドカバーにするの?」

「……うん。」

もう隠せないと悟り、小さくうなずいた。
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