売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
ためらいなく包みを広げる彼の手が止まる。

現れたのは、刺繍の途中のベッドカバー。

淡い生成色の布地に、手刺しの薔薇が一輪、咲いていた。

その刺繍はまだ三角の角にしか届いておらず、ほかの三辺は真っ白のまま。

それを見て、クライブは小さく息を呑んだ。

「これ……途中なんだな。」

私は何も言えなかった。
言葉にしたら、今にも涙がこぼれそうだった。

「どうして……刺すのをやめた?」

問いかけは、優しくて、でも真っ直ぐで。

私は、答えられなかった。

刺繍の続きを縫うことが、愛されている証になるような気がしていた。

だけど私はその資格がない。あれは、私の妄想だった。

「それ、もう……意味がないから。」

精一杯の声だった。けれど、震えていた。

クライブは刺繍の薔薇にそっと指を触れたあと、静かに私の隣に戻って来た。

そして、まだ未完成のベッドカバーを、私たちのベッドの上に広げる。
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