売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
──ああ、そうか。

私は“買われた女”だ。

彼にとって、それだけの存在。値札のついた商品。

なのにクライブは、今の私を、そうは呼ばなかった。

“彼女を抱かないと眠れない”

きっと、その言葉こそが、私の心を一番強く支えていた。

そして、あの日から三日後。

またしても屋敷の玄関に現れたのは、セドリック・ノーサンクロフト公爵だった。顔を見た瞬間、胸の奥にわずかな不安が広がる。

「すみません、クライブ様はまだお戻りではなくて……」

私はできる限り丁寧な声で応えた。すると彼は眉をひそめ、不満そうな声を漏らす。

「なんだ、ずいぶん余所余所しいな。前はもっと柔らかく笑ってくれたじゃないか。」

まだ会うのは2回目だというのに、馴れ馴れしい。

「申し訳ありません。応接間へご案内します。」

「……いや、クライブが帰るまで、部屋で待たせてくれないか?」

その一言に、私は一瞬動きを止めた。
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