この音が、君に届くなら
静かな音楽室に、澪の奏でる旋律が満ちていく。
最初はおそるおそるだった指も、少しずつなめらかに動き始めた。
音が重なるたびに、張りつめていた何かがほどけていく気がした。
(……音って、こんなに優しかったんだ)
ふと、自分の指先から流れる音が“今の自分”に重なっているように感じた。
不安や寂しさ、不器用な気持ち――すべてが音に溶けていく。
そのとき。
「……やっぱり、君だったんだ」
低く静かな声に、澪の手が止まった。
驚いて振り返ると、扉の近くに一ノ瀬奏が立っていた。
「ごめん。勝手に聴いてて。
でも……やっぱりすごい」
奏はゆっくり歩いてきて、澪の隣に立つ。
「どうして、来たの?」
澪はそう尋ねながらも、自分の心臓が早くなっていくのを感じていた。
「音楽室に顔出そうと思っただけ。……正直、君が来るとは思ってなかった」
「私も、来るつもりなかった」
そう返すと、ふたりの間にふっと小さな笑いが生まれた。
「弾いてくれて、ありがとう」
その言葉は、昨日の教室よりもずっと近くて、澪の胸にじんわりと染み込んでいった。
最初はおそるおそるだった指も、少しずつなめらかに動き始めた。
音が重なるたびに、張りつめていた何かがほどけていく気がした。
(……音って、こんなに優しかったんだ)
ふと、自分の指先から流れる音が“今の自分”に重なっているように感じた。
不安や寂しさ、不器用な気持ち――すべてが音に溶けていく。
そのとき。
「……やっぱり、君だったんだ」
低く静かな声に、澪の手が止まった。
驚いて振り返ると、扉の近くに一ノ瀬奏が立っていた。
「ごめん。勝手に聴いてて。
でも……やっぱりすごい」
奏はゆっくり歩いてきて、澪の隣に立つ。
「どうして、来たの?」
澪はそう尋ねながらも、自分の心臓が早くなっていくのを感じていた。
「音楽室に顔出そうと思っただけ。……正直、君が来るとは思ってなかった」
「私も、来るつもりなかった」
そう返すと、ふたりの間にふっと小さな笑いが生まれた。
「弾いてくれて、ありがとう」
その言葉は、昨日の教室よりもずっと近くて、澪の胸にじんわりと染み込んでいった。