この音が、君に届くなら
「……すごいな」
奏がぽつりと呟いた。
「何が?」
澪が問い返すと、彼はピアノの横にあるギターケースを指差した。
「オレ、今それ持って来てたんだ。昼練するつもりで。でも、弾く気がなくなった。
君の音で、もう充分だったから」
そんなの、きっと言いすぎだ。
だけど不思議と、嫌な感じはしなかった。
「……弾けばいいのに」
思わず澪はそう言っていた。
奏は少し驚いたように目を丸くして、それからふっと笑った。
「じゃあ……合わせてみる?」
「……え?」
「今の曲。コード、合わせてみるだけでいい。ちょっとだけ。やってみよう」
唐突な提案に戸惑いながらも、澪はなぜか首を縦に振っていた。
さっきまで、自分でも怖がっていた鍵盤に。
ほんの少し、心を預けてみたいと思った。
奏が椅子に座り、ギターを構える。
細くしなやかな指が、コードを押さえた瞬間――
その音は、思っていたよりずっと澄んでいた。
「せーの、なんて言わないよ」
奏がぼそっと言って、笑う。
澪は小さく笑って、鍵盤に指を置く。
ふたりの音が、ゆっくりと重なり始めた。
奏がぽつりと呟いた。
「何が?」
澪が問い返すと、彼はピアノの横にあるギターケースを指差した。
「オレ、今それ持って来てたんだ。昼練するつもりで。でも、弾く気がなくなった。
君の音で、もう充分だったから」
そんなの、きっと言いすぎだ。
だけど不思議と、嫌な感じはしなかった。
「……弾けばいいのに」
思わず澪はそう言っていた。
奏は少し驚いたように目を丸くして、それからふっと笑った。
「じゃあ……合わせてみる?」
「……え?」
「今の曲。コード、合わせてみるだけでいい。ちょっとだけ。やってみよう」
唐突な提案に戸惑いながらも、澪はなぜか首を縦に振っていた。
さっきまで、自分でも怖がっていた鍵盤に。
ほんの少し、心を預けてみたいと思った。
奏が椅子に座り、ギターを構える。
細くしなやかな指が、コードを押さえた瞬間――
その音は、思っていたよりずっと澄んでいた。
「せーの、なんて言わないよ」
奏がぼそっと言って、笑う。
澪は小さく笑って、鍵盤に指を置く。
ふたりの音が、ゆっくりと重なり始めた。