小鳥の爪―寵姫は2番目の恋に落ちる―
第1話 最愛の夫を守るため(5/6)
◆
(暑いわ……。やっぱり冬じゃないのね)
夏至の太陽が、シャオレイをジリジリと焼いていた。
彼女は、他の妃たちと共に宮廷の正殿前の広場にいた。皇帝が郊祀を行なっているあいだ、妃たちはここで五穀豊穣の祈りを捧げるのだ。
シャオレイは祈りつつも、頭の中では前世の出来事を歌っていた。
(7年5の月の16……龍の御所《ごしょ》の蒼穹《そうきゅう》に、麒麟《きりん》舞い踊り……。
つまり――ファンレン暦7年5月16日の今日、宮廷の空に麒麟が現れる)
儀式が終わりかけたその時、誰かが叫んだ。
「瑞祥《ずいしょう※》だ!」 [※めでたいことの起こるしるし]
全員が空を見上げると、麒麟の形をした雲が出ていた。
その場の喜びの声をよそに、シャオレイは小さく口ずさんだ。
「親王《しんのう※》妃に姫と彦が降臨す……」 [※皇帝の子に授けられた称号。作中ではゼフォンの弟]
やがて、親王妃が突然産気づいた。彼女は侍女と宦官たちに支えられ、急いで部屋へ運ばれていった。
◆
親王妃に男女の双子が産まれた知らせを、シャオレイはシンルイから着替えを手伝われながら、聞いた。
「お生まれになる前は、県主《けんしゅ※※》だと伺っていましたが、王子もお生まれになるとは、喜ばしいことですね」 [※※皇帝の兄弟の娘。親王の娘]
「ええ……」
(記憶とまったく同じことが次々に起きた。偶然にしてはできすぎてるわ。
まさか……3年前に戻ってるのかしら。そんなことってあり得る!?
でも、ゼフォンが亡くなったことが夢だったとは思えない。
――もしかして、この子のしわざ……?)
シャオレイはふと、額の小鳥に触れた。
◆
(暑いわ……。やっぱり冬じゃないのね)
夏至の太陽が、シャオレイをジリジリと焼いていた。
彼女は、他の妃たちと共に宮廷の正殿前の広場にいた。皇帝が郊祀を行なっているあいだ、妃たちはここで五穀豊穣の祈りを捧げるのだ。
シャオレイは祈りつつも、頭の中では前世の出来事を歌っていた。
(7年5の月の16……龍の御所《ごしょ》の蒼穹《そうきゅう》に、麒麟《きりん》舞い踊り……。
つまり――ファンレン暦7年5月16日の今日、宮廷の空に麒麟が現れる)
儀式が終わりかけたその時、誰かが叫んだ。
「瑞祥《ずいしょう※》だ!」 [※めでたいことの起こるしるし]
全員が空を見上げると、麒麟の形をした雲が出ていた。
その場の喜びの声をよそに、シャオレイは小さく口ずさんだ。
「親王《しんのう※》妃に姫と彦が降臨す……」 [※皇帝の子に授けられた称号。作中ではゼフォンの弟]
やがて、親王妃が突然産気づいた。彼女は侍女と宦官たちに支えられ、急いで部屋へ運ばれていった。
◆
親王妃に男女の双子が産まれた知らせを、シャオレイはシンルイから着替えを手伝われながら、聞いた。
「お生まれになる前は、県主《けんしゅ※※》だと伺っていましたが、王子もお生まれになるとは、喜ばしいことですね」 [※※皇帝の兄弟の娘。親王の娘]
「ええ……」
(記憶とまったく同じことが次々に起きた。偶然にしてはできすぎてるわ。
まさか……3年前に戻ってるのかしら。そんなことってあり得る!?
でも、ゼフォンが亡くなったことが夢だったとは思えない。
――もしかして、この子のしわざ……?)
シャオレイはふと、額の小鳥に触れた。