小鳥の爪―寵姫は2番目の恋に落ちる―
第1話 最愛の夫を守るため(4/6)
◆
白くぼやけた世界に、幼いシャオレイが立っていた。
(ここはどこ?私、どうしちゃったの……?)
目の前には、長いあごひげの老人がいる。彼はシャオレイの額に、小鳥の紋様を描き終えて、言った。
「そなたの願いを叶えてくれる、まじないだ」
(……おまじないでも何でもいいわ。
私の願いは、愛する夫を守り、共白髪になるまで添い遂げること。
そのためには――)
◆
「爪を研がなくちゃ!!」
シャオレイは、叫びながら目を覚ました。
そこは、彼女の宮――瑶吟堂《ようぎんどう》の寝台の上だった。
侍女のシンルイが、帳《とばり》を開けながら声をかけた。
「お目覚めでございますか、姫様」
シャオレイは全身に汗をかいていた。
喉には焼けるような痛み――いや、痛みはない。彼女は、喉の苦しみや血の匂いが、すっかり消えていることに気づいた。
不意に額に疼きを覚え、化粧台の鏡を覗いた。
額の小鳥は、沈黙している。
(夢だったの……?)
シャオレイはハッとして、「――ゼフォンは!?」とシンルイに尋ねた。
「陛下は本日は郊祀《こうし※》ゆえ、準備にかかりきりでございます」 [※皇帝が天地をまつる儀式。郊外の野原で行なう]
(無事なのね……)
シャオレイがほっとしたのもつかの間、次の疑惑が湧く。
「待って……郊祀は再来年でしょう?」
シンルイは真顔のまま答える。
「いえ、今年でございます。ファンレン暦7年ですから」
「ファンレン暦7年!?――何月何日なの……?」
「本日は、5月16日でございます」
シャオレイは息をのんだ。
(3年前!?嘘でしょ……?)
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白くぼやけた世界に、幼いシャオレイが立っていた。
(ここはどこ?私、どうしちゃったの……?)
目の前には、長いあごひげの老人がいる。彼はシャオレイの額に、小鳥の紋様を描き終えて、言った。
「そなたの願いを叶えてくれる、まじないだ」
(……おまじないでも何でもいいわ。
私の願いは、愛する夫を守り、共白髪になるまで添い遂げること。
そのためには――)
◆
「爪を研がなくちゃ!!」
シャオレイは、叫びながら目を覚ました。
そこは、彼女の宮――瑶吟堂《ようぎんどう》の寝台の上だった。
侍女のシンルイが、帳《とばり》を開けながら声をかけた。
「お目覚めでございますか、姫様」
シャオレイは全身に汗をかいていた。
喉には焼けるような痛み――いや、痛みはない。彼女は、喉の苦しみや血の匂いが、すっかり消えていることに気づいた。
不意に額に疼きを覚え、化粧台の鏡を覗いた。
額の小鳥は、沈黙している。
(夢だったの……?)
シャオレイはハッとして、「――ゼフォンは!?」とシンルイに尋ねた。
「陛下は本日は郊祀《こうし※》ゆえ、準備にかかりきりでございます」 [※皇帝が天地をまつる儀式。郊外の野原で行なう]
(無事なのね……)
シャオレイがほっとしたのもつかの間、次の疑惑が湧く。
「待って……郊祀は再来年でしょう?」
シンルイは真顔のまま答える。
「いえ、今年でございます。ファンレン暦7年ですから」
「ファンレン暦7年!?――何月何日なの……?」
「本日は、5月16日でございます」
シャオレイは息をのんだ。
(3年前!?嘘でしょ……?)