小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第20話 思い出の蜜月(4/4)
夜明け前、シャオレイはゼフォンの胸をさすりながら、小さく歌っていた。
「……しびれは短し 夜の毒……
……恋しき人よ また飲みに来て……」
それは、ゼフォンからの褒め言葉にかけた歌詞だった。シャオレイは本気だった。
だが、シャオレイには分かっていた。
(これもまた、一夜限りの夢だわ)
シャオレイに、愛する者がいないのは本当だった。いや、あえて作らなかったのだ。
金を巻き上げられたり、殴られたり、あっさり捨てられたり――そんなふうに青楼の姐さんたちが情夫《じょうふ※》と揉めるのを、シャオレイは間近で見てきたからだ。 [※正式な夫ではない、情を交わした男]
シャオレイへ、身請け話は何度かあった。だが相手は、年老いた大商人や、乱暴に抱いてくる武官などだった。
好きにもなれない、心の通わぬ相手の妻になるくらいなら――一生を、青楼で終えるつもりだった。
それでも、共白髪《ともしらが》になるまで添い遂げる関係に憧れはあった。だから、ゼフォンに出会ってほんの少し、期待してしまっていた。
シャオレイの伏せたまつげが、ゼフォンに決意させた。
(この女子《おなご》を手放せば、二度と手に入らぬ)
ゼフォンは瞬時に、彼女を宮廷の制度に組み込む算段を立てた。
(――青楼出身……だが歌舞の才はある。
ならば、“文化顧問”として枠を作ればいい。
時折、教坊で指導させれば、彼らの良い刺激にもなるであろう。
これならば後宮も荒れぬし、臣下も黙る)
◆
その日のうちに、シャオレイはゼフォンに身請けされた。ゼフォンと共に、大きな船団の御座船《ござぶね※》の甲板にいた。 [※皇帝が乗る船]
大河を吹く風に包まれ、シャオレイはゼフォンの胸に頬を寄せた。
「そなたに名を授けよう。
金糸雀《カナリア》――さえずりの美しい小鳥だ」
「カナリア……」
シャオレイはゼフォンの正体になんとなく気づいていたが、あえて尋ねなかった。
これから始まる物語に、シャオレイの胸は躍っていた。
(私はただ、彼を信じてついていけばいいわ……)
夜明け前、シャオレイはゼフォンの胸をさすりながら、小さく歌っていた。
「……しびれは短し 夜の毒……
……恋しき人よ また飲みに来て……」
それは、ゼフォンからの褒め言葉にかけた歌詞だった。シャオレイは本気だった。
だが、シャオレイには分かっていた。
(これもまた、一夜限りの夢だわ)
シャオレイに、愛する者がいないのは本当だった。いや、あえて作らなかったのだ。
金を巻き上げられたり、殴られたり、あっさり捨てられたり――そんなふうに青楼の姐さんたちが情夫《じょうふ※》と揉めるのを、シャオレイは間近で見てきたからだ。 [※正式な夫ではない、情を交わした男]
シャオレイへ、身請け話は何度かあった。だが相手は、年老いた大商人や、乱暴に抱いてくる武官などだった。
好きにもなれない、心の通わぬ相手の妻になるくらいなら――一生を、青楼で終えるつもりだった。
それでも、共白髪《ともしらが》になるまで添い遂げる関係に憧れはあった。だから、ゼフォンに出会ってほんの少し、期待してしまっていた。
シャオレイの伏せたまつげが、ゼフォンに決意させた。
(この女子《おなご》を手放せば、二度と手に入らぬ)
ゼフォンは瞬時に、彼女を宮廷の制度に組み込む算段を立てた。
(――青楼出身……だが歌舞の才はある。
ならば、“文化顧問”として枠を作ればいい。
時折、教坊で指導させれば、彼らの良い刺激にもなるであろう。
これならば後宮も荒れぬし、臣下も黙る)
◆
その日のうちに、シャオレイはゼフォンに身請けされた。ゼフォンと共に、大きな船団の御座船《ござぶね※》の甲板にいた。 [※皇帝が乗る船]
大河を吹く風に包まれ、シャオレイはゼフォンの胸に頬を寄せた。
「そなたに名を授けよう。
金糸雀《カナリア》――さえずりの美しい小鳥だ」
「カナリア……」
シャオレイはゼフォンの正体になんとなく気づいていたが、あえて尋ねなかった。
これから始まる物語に、シャオレイの胸は躍っていた。
(私はただ、彼を信じてついていけばいいわ……)