小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第22話 愛しい幻(5/6)
◆
シャオレイは、ヤン家の広間で出迎えられた。
ヤン夫人と嫡男《ちゃくなん※》のヤン公子《こうし※※》は、ほほ笑んで彼女に挨拶をした。 [※嫡子の長男][※※貴族の子息]
だが、場の空気はどこか冷たい。
特に、ヤン公子の妻や年若い弟妹たちは、さげすむような視線をシャオレイへ向けていた。
正室を脅かす者。
男を手玉に取る女。
そんな声が、シャオレイに聞こえてくるようだった。だが、シャオレイは気に留めなかった。
(青楼時代に飽きるほど浴びたわ)
◆
シャオレイは、ヤン公子の案内でヤン当主の寝殿を訪れた。
ヤン家の者たちも、ぞろぞろと付いてくる。
広々とした室内には、薬の匂いが漂っていた。
ヤン当主はやつれた顔で寝台に横たわり、ぼんやりと天井を見つめていた。
その姿に、シャオレイは胸が締め付けられた。
(前世のゼフォンも、こんな感じだったわ……)
シャオレイはこみ上げた涙をこらえて、ヤン当主に言った。
「初めましてヤン殿。お加減はいかがでしょうか?」
ヤン当主の目はゆっくりとシャオレイを捉えたあと、わずかに見開かれた。
その反応を見て、シャオレイは立ち上がった。そして、深く息を吸い込み、静かに歌い始めた。
「……大風を渡り 星のひとすじ……
……雲間の光 たどりゆき……
……やすらぐ春は この胸に……」
夜の静けさを思わせるシャオレイの旋律が、部屋を満たす。
ヤン当主は、シャオレイの声に導かれるかのように、上半身を起こした。
シャオレイに冷ややかな目を向けていたヤン家の者たちも、聞き入っていた。
そして、最後の一節が消えたとき――一瞬静けさが広がった。それから、一斉に拍手が沸き起こった。偽りのない、心からの称賛だった。
ヤン当主の目には、涙がにじんでいた。
シャオレイはほほ笑みながら、ヤン当主へ静かに問いかけた。
「……お気に召しましたか?」
ヤン当主は、かすれた声で「ミャオラン……」とつぶやいた。それは、亡き側室の名だった。
ヤン当主は、遠くを見つめていた。――まるで、愛しい幻を探すように。
シャオレイはそれを見て、胸が熱くなった。
(私が命《いのち》を終えたとき、ゼフォンもこうしてくれるかしら……)
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シャオレイは、ヤン家の広間で出迎えられた。
ヤン夫人と嫡男《ちゃくなん※》のヤン公子《こうし※※》は、ほほ笑んで彼女に挨拶をした。 [※嫡子の長男][※※貴族の子息]
だが、場の空気はどこか冷たい。
特に、ヤン公子の妻や年若い弟妹たちは、さげすむような視線をシャオレイへ向けていた。
正室を脅かす者。
男を手玉に取る女。
そんな声が、シャオレイに聞こえてくるようだった。だが、シャオレイは気に留めなかった。
(青楼時代に飽きるほど浴びたわ)
◆
シャオレイは、ヤン公子の案内でヤン当主の寝殿を訪れた。
ヤン家の者たちも、ぞろぞろと付いてくる。
広々とした室内には、薬の匂いが漂っていた。
ヤン当主はやつれた顔で寝台に横たわり、ぼんやりと天井を見つめていた。
その姿に、シャオレイは胸が締め付けられた。
(前世のゼフォンも、こんな感じだったわ……)
シャオレイはこみ上げた涙をこらえて、ヤン当主に言った。
「初めましてヤン殿。お加減はいかがでしょうか?」
ヤン当主の目はゆっくりとシャオレイを捉えたあと、わずかに見開かれた。
その反応を見て、シャオレイは立ち上がった。そして、深く息を吸い込み、静かに歌い始めた。
「……大風を渡り 星のひとすじ……
……雲間の光 たどりゆき……
……やすらぐ春は この胸に……」
夜の静けさを思わせるシャオレイの旋律が、部屋を満たす。
ヤン当主は、シャオレイの声に導かれるかのように、上半身を起こした。
シャオレイに冷ややかな目を向けていたヤン家の者たちも、聞き入っていた。
そして、最後の一節が消えたとき――一瞬静けさが広がった。それから、一斉に拍手が沸き起こった。偽りのない、心からの称賛だった。
ヤン当主の目には、涙がにじんでいた。
シャオレイはほほ笑みながら、ヤン当主へ静かに問いかけた。
「……お気に召しましたか?」
ヤン当主は、かすれた声で「ミャオラン……」とつぶやいた。それは、亡き側室の名だった。
ヤン当主は、遠くを見つめていた。――まるで、愛しい幻を探すように。
シャオレイはそれを見て、胸が熱くなった。
(私が命《いのち》を終えたとき、ゼフォンもこうしてくれるかしら……)