小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第23話 妃になった姫、カラスになった小鳥

第23話 妃になった姫、カラスになった小鳥(1/5)




 翌日、シャオレイは紫微殿《しびでん》の執務室に呼ばれた。

 ゼフォンが机上の上奏文をシャオレイに示して言った。
「カナリア姫を養女に迎えたい、とヤン家から上奏《じょうそう※》があった。
良い話だが、そなたはどうする?」 [※皇帝に意見を申し上げること]

 シャオレイの胸が高鳴る。
(ああ、こんなにうまくいくなんて……!
でも、慎重に答えなきゃ)

 シャオレイは口調を改め、困惑したようにふるまった。
「ヤン殿のお気持ちは嬉しいですが……」

「前当主の恩返しらしいぞ」

「でも、代々宮廷楽師を輩出なさる家なのに、私のような者でいいのかと……」

「そなたの才を気に入ったのだ。
そなたも宮中の立場が安定するだろう」

「……正直に申し上げると、高貴な身分であれば、と思ったことはあります」
 一拍置いて、シャオレイは頭を下げながら言った。
「もし、陛下がよろしいのでしたら……お受けいたします」

 ゼフォンは嬉しそうに言った。
「――そなたがヤン家の養女になるなら、妃に昇格しよう」

「えっ!?」

「今まではそなたの出自が壁になって、妃にしてやれなかった。
だが、その壁はもはやない。
臣下たちも納得せざるを得ないだろう」


 それは、シャオレイにとってはまさに、願ってもない展開だった。だが、強欲な女だとゼフォンに見なされれば、疎まれる。
 シャオレイは、あえてわずかに眉を寄せ、戸惑うふりをした。
(ここで、喜びをあらわにしてはいけないわ)

「……どうした?嬉しくないのか?」

「いいえ、急な話で驚いてしまいました。
――陛下の恩情に感謝いたします。
謹んで、お受けいたします」

「吉日を選んで、冊封《さくほう※》の儀を行なおう」 [※皇帝から任命されること]

 ゼフォンはシャオレイの肩を抱き寄せながら、満足げに息をついた。
(ようやく妃にしてやれたな。長かった……。
予が、妃にしてやったのだ)
 ゼフォンがそう思った瞬間、ふと胸の奥が妙にざわついた。
(何かが違う……?
――いや、予がカナリアを妃にしたのは、まぎれもない事実だ)
 ゼフォンは、答えの出ない疑問を振り払うように、シャオレイの髪にそっと口づけた。

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