小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第24話 罠は蜜の味(4/6)


 シャオレイは、ぼんやりとした頭で考えていた。
(犯人は、シュエン妃かしら。
まさか、寺院で仕掛けてくるなんて……。
小鳥はなぜ警告してくれなかったの?
……取るに足らないから?)

 ミアルが持ってきた水を、シャオレイはがぶがぶと飲む。

 フェイリンは腕を組み、部屋の中をウロウロしていた。やがて、この空気に耐えられなくなったのか、口を開いた。
「催淫薬なら、大量に水を飲むしか――」

「もう喋らないで!」
 シャオレイは怒鳴った。彼女の体は、フェイリンの声すら甘美な刺激と錯覚し始めていた。

 シャオレイの迫力に、フェイリンは黙った。

 ミアルが、シャオレイへ言った。
「妃様に、陛下を誘惑させようとしたんでしょう」

「よりにもよって、陛下が夜伽を控えているときに。
しかもこんな場所で……」

 慎みや徳を重視する寺院で、つやめいた雰囲気を出すわけにはいかない。
 もしそんなことをしたら、シャオレイは”恥知らず”として宮中で軽蔑される。――ゼフォンからも。

 ミアルが、フェイリンをちらと見て言った。
「――いっそのこと、フェイリン殿と発散なされては?」

 シャオレイは水を噴き出しそうになり、ゴホゴホとむせた。

 フェイリンは、思い切り眉をひそめて目を見開いている。

 ミアルに背をさすられながら、シャオレイは言った。
「だめよ……強力だから彼が干からびちゃうわ」

「干からびる……」
 ミアルがシャオレイと共に、フェイリンを見つめる。

 フェイリンの目が鋭くなったのに気づいて、シャオレイは言い直した。
「兄さんは、もうそういうことはしたくないのよ」

 フェイリンの胸に、イラ立ちが走った。
(そうだ。女に溺れるのは、仇討ちの邪魔だ)
 だが、なぜか心の奥がザワつく。他にも理由があるような気がしたが、フェイリンはそれに目を向けなかった。

 フェイリンは静かに、だが不機嫌に言った。
「……そなたたちには、慎みがないな」
 それから、フェイリンはシャオレイへ「シャン嬢は、そなたに悪影響を受けすぎだ」と言い残し、部屋を出て行った。

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