小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第25話 ついばみたい喉(4/6)


「もっと飲め」

 フェイリンの声にうながされ、シャオレイは顔を上げた。
 フェイリンと視線が絡み合うと、シャオレイは目を見開いて動きを止めた。――まるで、今初めてフェイリンの存在に気づいたかのように。
 やがて、シャオレイはとろんとした目で彼を舐めまわした。

「どうした……?」

 フェイリンの呼びかけにも答えず、シャオレイの熱に浮かされた意識は、目の前の男を獲物として捉えていた。

 フェイリンの、ひそやかに熱を帯びた瞳。
 かすかに震えるまつ毛。
 端正な頬の輪郭。
 きゅっと引き結ばれた唇。
 そして、しなやかな筋が刻まれた首。
 フェイリンの喉仏が、ゆっくりと上下している。そこから垂れた水滴が、衣の下へと吸い込まれていった。

 シャオレイはしばらく、喉仏へ釘付けになっていた。不意にある衝動が芽生え、ごくりと唾を飲み込んだ。
(――ついばみたい)

 シャオレイの細い指が、フェイリンの首すじをなぞる。

 フェイリンは、シャオレイのなすがままだった。

 水滴に濡れ、熱を持ったシャオレイの赤い唇が、フェイリンへ近づく。

 薄く漏れたシャオレイの吐息が、フェイリンの喉仏にかかった瞬間――フェイリンの理性が叫んだ。
(これを受け入れたら、俺は終わる)

 フェイリンの手刀が、シャオレイの首すじを打った。

「っ……!」
 シャオレイの瞳が揺らぎ、そのまま崩れるように気を失う。

 フェイリンは息をついた。腕の中のシャオレイを抱きしめたまま、しばらく目を閉じる。
(……義兄、か)
 苦い感情が、フェイリンの胸の底に落ちていた。

 後から到着していたミアルは、川にいるふたりから背を向けていた。見てはいけないと、思っていたからだ。
 近づいてくる大きな水音にミアルが振り向くと、フェイリンがシャオレイを抱きかかえ、川から上がってくる。
 ミアルはシャオレイへ駆け寄った。
「妃様!?」

「気絶しているだけだ」
 淡々と答えるフェイリンの声には、わずかな疲労がにじんでいた。

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